2005年4月1日金曜日

校舎計画のプロセスと「私の思い」


在校生のみなさん、はじめまして。私は平成5年卒業、第26期生の影林督諭(かげばやし まさつぐ)です。

新しい校舎での学校生活は楽しいですか。また、HP(ホームページ)の施設案内に各施設の紹介がされていますので、一度ご覧になってください。

学校の施設紹介から入りましたが、私はこの新校舎を設計・監理させていただいた設計者です。現在、安井建築設計事務所(http://www.yasui-archi.co.jp/)に勤務し、中学・高校・大学などの教育施設を中心に、日本だけでなく海外の学校の設計にも携わっています。平成20年には、現在手がけている学校法人金蘭会学園 金蘭会高等学校・中学校の新校舎も竣工します。それ以外にも、数々の設計デザインコンペに取組み、日々他社との熾烈な競争社会の中で、勝利と敗北を味わっています。

「勝利と敗北」。そうなんです。今回の設計コンペについても、本年7月の「学校だより」に記載しておりますように、辻本校長先生の考えておられた「学校というものがもつ人間関係の縦軸・横軸のつながり」が、私の提案する「空間的ゆとりが生みだす交流」と一致した結果、当社を含む大手3社による設計コンペで勝利し、運良く仕事を頂くことができました。しかし、そこに至るまでそして現在も数々の敗北を経験しています。振り返ると人生常に勝利と敗北が付きまといます。その考え方は人それぞれだと思います。何が、何に、勝利し敗北なのか。

今でも忘れられないのが、この金蘭千里に入学し初めの三教科テストで上位10人の中に選ばれ非常にうれしかったのですが、次のテストでは全く及びもしませんでした。当時、小学校を出る頃の私は成績も上位クラスで、そのまま維持できると自分に甘えていたのかもしれません。ちょっとした気の緩み・努力を怠ったのでしょう。でもそれからは日々成績は下がっていく一方でした。中学ではサッカー部に所属していましたが、ボールを蹴りながら、なぜ成績が上がらないのかずっと悩んで、サッカーにも集中できず、結局高校で退部してしまいました。努力はしているのに・・・なぜ・・・。自分には負けたくない。

決してあきらめませんでした。投げ出したりしませんでした。敗北感を常に味わいましたが、その敗北感は努力を続けているからこそ感じられることなのです。悔しさも人一倍感じました。でもその悔しさをバネに次へつなげる努力をしました。そのあきらめない姿勢を維持すること、その持続力が今の自分の力の源だと信じています。建築設計という仕事は、毎日絶えず考え続ける仕事です。世界で有名な建築家 安藤忠雄先生は次のように話しておられます。「寝ているとき以外は建築のことだけを考えている」と。それは考えるという姿勢を維持する、努力し続けるということに他なりません。

先日、ある一人の在校生と話をしました。高校3年生でしたが、自分の将来・進路について非常に真剣にしかも自分の言葉で分かりやすく説明してくれました。今の勉学内容と自分の将来目指す道が直結していない。直結するようなことをしたいと。直結することをしている友達のことを考えると、自分に焦り、悩んでしまうのだと。でも、そこで私は大いに悩みなさい、焦りなさいと言いました。君の人生はこれからだし、今の焦り、人との遅れなんてたいしたことではないと。その悩み続ける姿勢が必ずよい結果を導き出してくれると。そして今の勉学内容が直結していないことなんてないのだと。英語や歴史なんて必ず、君の進むべき道に必要なんだと言いました。

敗北感はかならず勝利へと導いてくれ、その敗北を味わうことで人は努力し成長し続け、勝利するのだと私は思います。

では、努力し続け完成した新校舎について、その計画プロセスと‘私の思い’を3つお話しします。

1つ目はいかなるプロセスでこの校舎を計画したかです。キーワードは「交流=コミュニケーション」でした。いかにして学校内でのコミュニケーションを生まれやすくするかを考え、それが各階の廊下にある「メディアブース」や、「発表広場」、「光の広場」、職員室の「交流ホール」・「質問コーナー」といったゆとりのある空間を作ることで生徒同士、教師と生徒の交流を生み出しやすくしています。休憩時間などにメディアブースで楽しく話をしている君達を見た時は、結果として非常によかったなと感じています。大いに利用してほしいと思います。


そして2つ目ですが、校舎にはちょっとした「ハレ」の舞台が必要だと考え、外からも中からも見えるガラス張りの大階段を作りました。この学校には佐藤講堂といったすばらしい発表の舞台がありますが、この校舎の中にそうした君達が主役となるような舞台を作っています。また、このガラスは日々努力し成長する自分を映し出す鏡としても機能します。6年後、すばらしく成長した自分をこのガラスに映し、自分を見つめ、卒業式にゆっくりと大階段を下り、大学・社会へと羽ばたいていってほしいと願います。

そして3つ目は、こうした様々な思いをちりばめてできた素晴らしい環境を大切に使いそして、次の世代へ残す役目を君達は担っているということです。先輩は後輩の見本となって指導し、後輩は先輩の良い行いを見習う。そしてこの校舎の良い環境を守ろうという姿勢を維持すること。そうすれば、さらにどきどき・ワクワクする自由な環境となって使われ始めると思います。そのような役目が君達に懸かっているのです。

学校にとって校舎の建替えは一大プロジェクトであり、人生のうちでめぐり合うことさえ難しい・運命的な機会だと思います。その中で、当時偶然にも卒業生であり、大学・大学院で建築を学び、社会に出て3年目に関わることができ、こうして母校の校舎を作ることが出来ました。これまでには多くの年月をかけ、大勢の人たちが緊張感を持続し、力を合わせ支え合い、こうして無事に校舎が出来上がり、君達が毎日生活しています。こういった運命すら感じる出会い・自分の人生・周りの環境、それらすべてに感謝して止みません。

君達にはこれから大学・社会といったすばらしい未来が控えていますが、常に「感謝」の気持を忘れずに、着実に一歩一歩あせらず、ゆっくりと自分の人生を歩んでほしいと思います。

「敗北は最良のチャンスです。再度自分自身を発見し、追求する姿勢を持続する。そうすれば最後には必ず勝利が待っています。」