2016年5月4日水曜日

「演劇ワークショップ」ってなんダ!?

とまどいと不安

「演劇」と聞いて何を思い浮かべますか?

「おぉロミオ、あなたはなぜロミオなの!?」なーんて、大きな声を張り上げて天を仰ぐ役者の姿でしょうか。

はたまた、宝塚の華やかな舞台や劇団四季のミュージカルでしょうか。


中学生に「今度授業で演劇ワークショップをするよ」と言ったら、戸惑いと不安の表情が広がりました。

下の写真を見てください。

「なんか、すっごい恥ずかしいことさせられるんちゃうん…」


みんな、緊張の面持ちです(笑)

左の女性がワークショップのリーダー黒木さん(通称クロッキー)。

その他、色んな劇団の俳優さんが講師として駆けつけてくれました。



演劇ワークショップとはなにか

演劇ワークショップは、現代国語の授業の一環として、2年前から中学生を対象に行っています。

これまで国語科では、読む・書く・聞く・話すの4技能を基本に、言葉を用いたコミュニケーション能力を育成してきました。

しかし、人と向き合うとき、私たちは言葉だけでなく、相手の視線や表情、身ぶり手ぶりなど、相手の全身からたくさんの情報を得ています。

そして、こちらから相手に気持ちを伝える際にも、どんな表情や声で発信するか、どんな身ぶりで訴えるかで、情報の受け止められ方が変わります。

そこで、ことばとからだを用いた表現力を伸ばすために、プロの劇団の俳優さんのお力を借りて、コミュニケーションの授業をしてもらうことになりました。



まずはアイスブレイク

写真は、2年前中3生対象に行なったもの。

1回目の授業では、五感をフルに使ったコミュニケーションゲームで、緊張をほぐします。

たとえば、

全員その場に立った状態から「他の子と同時にならないように、その場に座りましょう!」「同時になったら罰ゲーム!」

成功するためには、互いに気配を感じ取って協力する必要があります。まさに「空気を読む」ですね。

失敗したY君には、強烈なハグが!(男子限定の罰ゲームです、ご安心あれ) 


反対側から見た図(F.ジャパンさん。藤原紀香さんと共演したこともある俳優さんです!)


もう一枚。罰ゲームなのに、A君はなぜ恍惚の表情なんだ!!


他にも、ジェスチャー伝言ゲームなどでワイワイやっていると・・・


最初の緊張はどこへやら、大盛り上がりです!





いよいよ実践!

こんな風に場がほぐれたところで、寸劇レッスンが開始されます。


手始めに、ごく短いセリフのやり取り。2人ペアになって、以下のセリフで劇を考えます。


A「おはよう」
B「おはよう」
A「そのカバン」
B「え?」
A「いいね」
B「ありがとう」

場所も関係も人物も設定は自由。

制限時間の中で一生懸命考えて、ある班は祖母と孫の家での会話になりました。

ある班は電車の中での友人同士の会話、ある班はデート中の恋人など、色々なシチュエーションが登場しました。

場所や2人の関係性をセリフで伝えられないため、演技に工夫が必要です。

電車内が舞台の2人は、つり革にぶら下がって体が揺れている演技をしていました。


普段の国語の授業とは異なり、与えられたセリフをどのように解釈してもよいことが、生徒にはとても新鮮だったようです。

他の班の演技や設定に

「そうきたか!」
「あーなるほど!」

など、感心したり、驚いたり。

演じることにも鑑賞することにも、みんな一生懸命です。




もひとつ実践!


ここで、昨年度行われた中1生の授業の様子も紹介しましょう。

ある回の授業では、クラスが5人の班に分かれました。そして各班には、下記のいずれかの場所が割り当てられます。

 〔場所〕
 ・電車の中
 ・すごく寒い日の公園
 ・病院の待合室
 ・図書館の中
 ・山の頂上
 ・満席のファミレス



そして班のメンバーは、以下の条件を守りつつ、自分たちで話し合って、セリフや役割を考え、寸劇を行います。

 〔登場人物①~⑤〕
 ・イスを使う
 ・はじめに①②座っている
 ・次に③④やって来る
 ・すると①②が席を立つ
 ・最後に③④座る
 ・⑤はどこで出てもよい


さて、どんな芝居が完成したのでしょうか!?



☆ 以前本校のFacebookで紹介した動画を改めて紹介しましょう ☆

  ここをクリック(リンク先にジャンプします)



この班は「満席のファミレス」という設定で寸劇を考えました。

劇の内容をト書きとセリフで、ざっくりおこしてみましょう。


★〜〜〜〜〜★〜〜〜〜〜★


◯テーブル席に着いた男性客①②のところへウェイターがやってくる

  ウェイター「お待たせしました、注文はお決まりでしょうか?」
  男性客①「ハンバーグをお願いします」
  男性客②「パスタで」
  ウェイター「はいオーダー入りまーす、ハンバーグとパスタでーす」


◯料理を持ってウェイターが再びやって来る

  ウェイター「お待たせしました。店内大変込み合ってますので、早くお食べください!」


◯男性客①②、急いで食事を終え、レジに向かう


◯その後、女性客③④が空いた席にやってくる

  ウェイター「お待たせしましたー、メニューお持ちしましょうか」
  女性客③④「ナポリタンをお願いします」
  ウェイター「ナポリタンですね。オーダー入りまーす、ナポリタン2つでーす」


◯料理を持ってウェイターが再びやって来る

  ウェイター「ナポリタン2つになりまーす。ごゆっくりお召し上がりくださいませ!」


★〜〜〜〜〜★〜〜〜〜〜★


男性客と女性客で、ウェイターの応対がまるで違うというオチ。言葉遣いも微妙に変えながら、短い時間でうまくまとめています!

このように限られた時間で話し合い、即興劇を行うのですが、各班、色々なお芝居が繰り広げられ、大いに盛り上がりました。

別にオチをつけることは条件ではないのに、なぜかどの班もしっかり笑いを取りにいきます。

関西人の血がそうさせるのでしょう(笑)



ふり返りとアドバイス


寸劇が行われた後は、先生方からの講評とアドバイス。

「あそこのセリフはこう言ったほうが伝わるよ」

「こういう動きを加えたら、そこがどういう場所か見ている人に分かるのでは?」

「あそこで間を置いたのが効果的だったね」


みんな、なるほどー、そうか!と、真剣にうなずきながら聞いています。

各班の多様な表現方法と先生方からのアドバイスから、新たな視点や気づきを与えられ、生徒は表現の可能性、奥深さ、面白さを体感していきます。 






リスクとリスペクト

リーダーの黒木さんが、授業の中でおっしゃっていたことがあります。


「表現することにはリスクが伴います」

「がんばって表現しても、笑われないかな、変に思われないかなって不安になるよね」

だから、みんなが互いをリスペクトすることが大切です」

「この授業を実りある、楽しいものにするためにも、リスペクトを忘れないようにしようね」

「舞台が成功するかどうかの7割は、鑑賞するお客さんの態度で決まります」


他人任せで、自らリスクを負わず、安全な場所から人を非難することは簡単です。

匿名で人を誹謗中傷することが簡単にできる今の世の中だからこそ、コミュニケーションに、敬意と思いやりがますます大切になっています。




ワークショップのもう一つの意図

演劇ワークショップは、表現力を鍛えることだけが目的ではありません。


自分が表現する側に立つことで、クラスメイトの聴く姿勢に助けられていることに気づかされます。


そしてその体験があるからこそ、自分が聴き手の側になるとき、相手をリスペクトして応接することができるようになるのです。


聴く人の姿勢で、表現者の姿勢も意気ごみも変わる。


演劇ワークショップは、そのことを双方の立場から体現できる場でもあるのです。



そして今年も

今年度は、中1~3年生に行われることになった演劇ワークショップ。この2年間の授業を踏まえて、内容をより一層充実させていきます。

どんな学びの体験が繰り広げられるのか、今から楽しみです。